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"SOUND MAKING" 解説 by キメラ"KAZU"袴田
 

当時のレコーディング状況について

今回のDISC1・2の音源の元となっているTabbasaデモテープVOLⅠ〜Ⅳ、及び「有角神舞踏」は、全てセルフプロデュースであると共に、レコーディングに関して全くの素人であったメンバーが、自らの手でひとつひとつ手探り状態で作り上げた、云わば悪戦苦闘の音の記録でもある。(ゆえに一般に出回っているミュージックCD等とは、音質的な部分でかなり異なる)
 まず、Tabbasa VOLⅠ(4曲入り)について。当時オリジナル曲が何曲かできたところで、自分達の曲をもっとよく知って欲しいという想いから、ある日、デモテープを作ってみようということになった。(ちなみにデモテープとは、元々は、アマチュアバンドが、メジャーレコード会社等への売り込みのために配布していた自分たちの楽曲を録音したデモンストレーション・テープのことである。そして当時本土では、それらは、こうした宣伝用以外に、一般のファン向けにも販売されるようになってきていた。)
 そして、いざレコーディング開始ということになるのだが、当時の自分たちには、機材の整ったレコーディングスタジオで録音するような資金も無く(当時は、今と違ってアマチュアバンドが使用できるような手頃なレコーディングスタジオ自体がなかった)、またそれを援助してくれるような伝手も無かった。そこで、当時Tabbasaが所属していた琉大ROCK同好会の部室(練習室)を使って録音することとなった。但し、録音機材は、当時出始めたポータブル4トラックカセットデッキ(但し、一度に2トラックまでしか録音できない。大きさはA4コピー用紙位。)が1台とシュアのボーカル用マイクが1本、その他安物マイクが数本、そしてエフェクターは、ギター用のコンパクトディレイやディストーションのみという悲惨な状況であった(その頃、ヨーロッパあたりの古城を借りて、ドラムセットを持ち込み、その周りに24本のマイクを立てまくりレコーディングすることを理想と思っていた自分にとって、このギャップは、かなりのカルチャーショック!であった)。しかしそんな状況にもめげることなく、まあとりあえず“なんとかなるだろう”と、即レコーディングが開始され、無い知恵を振り絞り、試行錯誤を繰り返し(例:当時のベーシスト原は、練習室内にあったアップライトピアノの外板をいきなり外し、その共鳴版の前にマイクを立て、ピアノの前にベースアンプを置いて録音したりしていた)、マスタリング(最終のマスターテープの仕上げ加工)段階では、エフェクターが足りない分を多彩な(?)効果音でカバーし(ちなみに「死者達の夜明け」のラスト部分に出てくる絶叫は、自宅の狭いシャワールームに男女4人が入り、壁をたたきながら叫びまくって収録した。恐!)、初体験につきもののアクシデントにも、多々見舞われながらもなんとかVOLⅠマスター音源は完成した。ついでに言うと、レコーディング作業は、メカが得意だった原を中心に進め、本庄は、このためにわざわざパソコンを買ってワープロで歌詞カードとジャケットを作り、モリユキは、Tabbasaのロゴと宣伝用のポスター等デザイン分野を、そして袴田は、販売用デモテープの量産とプロフィール作り及び広報活動を担当するという、それぞれの得意分野を活かしたTabbasa分業体制が、この時を契機に確立された。
 次に、TabbasaVOLⅡ(5曲入り)について。この時点で、4トラックが同時に録音できるポータブルカセットデッキとポータブルミキサーが登場し、マスタリング段階では、デジタルディレイとスプリングリバーブというエフェクター類が追加され、レコーディング環境は、前回より若干向上された。レコーディングエンジニアは、VOLⅠと同じく、原が担当。
 続いて、TabbasaVOLⅢ(7曲入り)について。ベーシストの原が脱退したため、レコーディングエンジニア不在となり、やむなくこの時点から、各パートの録音は、各自でおこない、マスタリングは、メンバー全員で、手探り状態でおこなった。またこの時、新たにデジタルリバーブという理想のエフェクターがやっと加わった(嬉)。
 続いて、TabbasaVOLⅣ(10曲入り)について。この頃になるとメンバーも多少レコーディングに慣れてきて、各々自分のパートの音録りに、いろいろ凝り始めた(特に本庄は、この頃ダブリングやらテープスピード変換や逆回転など次々と多彩な技を駆使して録音していた。驚!)。機材面では、新型の4トラックデッキ(大きさはA3コピー用紙位)と新型デジタルリバーブが更に加わった。しかし、買ったばかりで使い勝手がよく分からず、相変わらずマニュアル片手に悪戦苦闘の連続であった(笑)。
 アルバム「有角神舞踏」(9曲入り)について。Tabbasa初のレコード用音源のレコーディングということで、一度は、本格的なレコーディングスタジオでの録音を考えたが、前回のVOLⅣの録音時の凝り方から、一体何時間スタジオを押えなければならないのか、見当もつかなかったので、結局いつもの練習室を使って録音することとなった。但し、セルフレコーディングにそろそろ限界を感じつつあったところに、運良くROCK同好会の後輩が、レコーディングエンジニアとして志願してくれたので、録音からマスタリングまでをその後輩を中心におこなった。この時初めて、マスターにオープンリールテープというものを使用し、そして本土のレコード原盤を制作する会社へ完成したマスターテープを送った(その後、出来上がって送られてきた初めての自主制作レコードを手にした時は、さすがに感動で胸がいっぱいになった)。
 かくして、苦難の末に産み出されたTabbasaの音源達は、メンバーの熱い想いと共に、無事ファンの元へと届けられたのであった。めでたし、めでたし。
 
ちなみに、DISC1のラストにボーナストラックとして収録されている「ネフェルトの祈り」は、アルバム完成後にできたため、最後に一度だけ本格的なレコーディングスタジオを使って録音してみようということで録った貴重な未発表音源である。但し時間と予算の都合で、バッキングは一発録り、ギターソロとボーカルのみ別録りした。
 
 セルフレコーディングという作業は、とにかく凝り始めたら際限がない。自ら録音し、ミキシングした音に、自らGOサインの判断を下さなければならない状況に加え、レコーディング技術を習得しながらなので、なおさらである。そして深夜に及ぶマスタリング作業は、難航を極め、やがて辺りがうっすらと明るくなり始めた頃、体力の限界と共にその作業は終焉を迎えるのであった(笑)。この際限なく自分を追い込み、没頭するセルフレコーディングという状況は、ある意味、文化祭前日のあのワクワク感にも似た非日常的な感じで、自分にとっては、たまらなく楽しい時間であった。
 Tabbasaのレコーディングにまつわるエピソードは、まだまだ山ほどある。そして、それらひとつひとつが、自分にとっての青春時代の楽しい想い出であり、かけがえのない宝物である。

 

 
 

 

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有角神舞踏

有角神舞踏 DISC 1 (CD)
1.ダンシング・フリークス 2.聖杯 3.アイリス館で 4.野バラの貴公子 5.牧神のマドリガル 6.イシュタル・ゲート 7.ライカンスロープ 8.a)白亜紀来復 b)暴君竜の黄昏 9.弥生、十六夜、銀胡蝶 10.ネフェルトの祈り(ボーナストラック )
【'88.11月オリジナル12inchLP発売】
 

幽鬼達の饗宴

幽鬼達の饗宴 DISC 2 (CD)
1.序曲『爛陽』 2.王陵の谷 3.アギの橋 4.鬼(手の鳴る方へ) 5.屋根裏の子供達 6.ララバイは最後に(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.坂口)〜「Tabbsa Vol.Ⅳ」より
7.ヴェルヴェット・キティー 8.悦楽園 9.葬列(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.かまるー)〜「Tabbsa Vol.Ⅲ」より
10.バフォメット・ライジング 11.マダム・エルゼベエト(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.原)〜「Tabbsa Vol.Ⅱ」より
12.オープニング 13.ジュダス 放浪者の夢 14.スターチャイルド 15.死者達の夜明け(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.原)〜「Tabbsa Vol.Ⅰ」より
16.沼へ(ライヴ・ヴァージョン)(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.原)〜「Tabbsa Vol.Ⅱ」より
 

異邦からの誘惑

異邦からの誘惑 DISC 3 (DVD)
1.屋根裏の子供達   2.ヴェルヴェット・キティ  3.魔道師の船 〜 1987.2.15 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
4.ダンシング・フリークス 5.王陵の谷 6.鬼(手の鳴る方へ) 7.ネフェルトの祈り 〜 1988.11.6 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
8.葬列  9.セイレーン・エレジー  10.スパイダー・スパイダー 11.ギター・ソロ 〜 1987.2.15 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
12.悦楽園 〜1986.11.9 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
13.マンゴ・ソング 〜 1987.11.8 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
14.マダム・エルゼベエト 15.死者達の夜明け 16.沼へ 17.ジュダス 〜 1987.2.15 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA