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"幽鬼達の饗宴" 解説 by ゾンビ本庄
 

1. 序曲『爛陽』

<解説コメント>
 通称『おっちゃん』という後輩がいて、ルックスはいかにも『おっちゃん』なのだが、実はものすごい才人で、歌がめちゃくちゃ上手く、英語はペラペラ、常時、数バンドのドラマーを兼任していた。オープニングの曲を創ってくれるというので、ものは試しと頼んでみた。できあがりを聞いてメンバー一同絶句した。
この功績のせいか、彼は後年『神様』と呼ばれ敬われるようになった。
 

2. 王陵の谷

出でよ 出でよ 金のホルスよ この地表に
ひとつ ふたつ 亡くした玉座 恋しがるままに
わが栄光 ほどなくに アナビスのほの白き 
かいなに抱かれん バイ、カーよ!
アモン・ラー 大いなる 
アモン・ラー 枕辺の主 
転わる 転わる 鉄の車輪に引きしだかれ
パロの御名も やがて ナイルの砂に洗われて
滅びゆく肉塊も睦みあう温もりも
彼の地へ運び去れ バイ、カーよ!
アモン・ラー 大いなる 
アモン・ラー 永遠の盟主 
『汝 夕べの舟にて眠り あしたの舟にて目覚めん
汝 すべての神々をつかさどるもの
されど 汝をつかさどる神はなし』
黄泉の陽射し浴びて花咲く 不具者の宴 
木乃伊集い まぎれ麗し かんばせの君が
命ある戯画衆と 亜麻衣の支配者に 
蜜月終わりなく バイ、カーよ!
アモン・ラー 大いなる
アモン・ラー 大いなる
アモン・ラー 大いなる
<解説コメント>
 エジプト神話をカジったことがあれば、歌詞は平易だと思う。
 すばらしく壮大なバッキングだったので、『アモン・ラー』の大コーラスから詞ができあがった。本土から「タバサの頭上にファラオの翼が開かれますように。」なんて、イカしたファン・レターをもらって狂喜した。
ライブではオープニングを『屋根裏の子供達』と争った。
 今にして思えば『タバサ流オリジナリティ』を確立したのが、
アモン・ラーをテーマにしたこの曲で、Tabbasa実質上の最後の曲になったのが、アモン神と対立するアトン神、ネフェルティティをテーマにした曲になったという事実に、何か因縁めいたものを感じる。
 よく「どうして、ああいう歌詞が書けるんですか?」と聞かれるが、
これはオレの関与できることではない。
バッキングが歌メロと歌詞を運んでくるからだ。その時点でストーリーができあがっていることもあるし、最初に出てきたキーワードを後から埋めていくこともある。
どちらにしても、あくまで「曲が望んでいるから、こうなった」という結果になる。
だから、「こうしよう」と意識して創ったものではない。
オレというフィルターを通って、勝手に生まれ出てくるのである。
 

3. アギの橋

<解説コメント>
 次の『鬼』曲が民話風なので、みんなのよく知っている童歌をアレンジしてみた。良識あるファンから、気色悪がられた。
 

4. 鬼(手の鳴る方へ)

鴫の鳴く夜は囲炉裏の端で 物の怪がする声がする
糸杉濡らす雪明かりに 格子天窓わだかまる湯気に
しぃ…… 静かに 息を殺すと そーら
ほら…… 誰かいる 
ほら…… そこに何かいる
「親に似ぬ子はヌシのタネじゃ」と つぶて混じりのわらべ唄
目隠し鬼はいつもわたし 角のくさびをひきづる痛みが
しぃ…… 静かに 指を伸ばせば ほら
ほら…… 誰かいる 
ほら…… そこに何かいる
座敷牢這う土蜘蛛の糸 黒い血の糸 紡ぐ糸車
我と我が身の未生怨より禍々しきもの 末枯れるまで
<解説コメント>
 モーリーがアイデアを持ってきた。
「ほら、ほら、ほら」というサビの詞が「Fuckin`Fuckin`Fuckin` Fuckin`Hell!」という信じ難いものだった。信じられるか?! ハネるバックが手鞠唄だったので、思いきり和風、それも日野日出志風になった。日野日出志はもっとも崇拝するマンガ家で、著作のほとんどを所有している。ブキミとか、グロいとか言われながらも、異形なもの、孤立したものに対する慈しみが全編からにじみでていて、つらい時に読むと癒される。
 

5. 屋根裏の子供達

ここへおいでよ ボクと遊ぼう ガスのランプに揺らめくキミ
顔をみるのははじめてだけど クモの巣だらけ とてもおかしい
お空の星を数え終えたら みせてあげよう ボクのおもちゃ 
お耳のとれたウサギがいるよ 月の光におどりだすのさ
ねえ かくれてないで 
キミとボクはいつもお友達でいようよ
行っちゃいやだよ ここはさみしい ひとりになるとこごえそうだよ 
ママがよぶのかい それならいいや キミもいつかはボクになるのさ
ねえ かくれてないで 
キミとボクはいつもいつも…… お友達でいるんだよね
<解説コメント>
 ドラムのハカマダと、ベース・ギターを持ってセッションしてできた曲。マーチみたいなオープニング、メイン・ベース・リフ、サビまで、この時できあがった。
 ギターのモーリーが「こんな展開、ありえないよっさ!」とクレームをつけ、代替え案をいくつか出したが、結局、最初のが一番かっこいいということになった。悩んだかいがあったのかモーリーの本来正統的なギターに、なにやら変質的な薫りが生じたのがこの曲からだった。
 歌詞は、壊れかけた古い屋敷の屋根裏部屋で、友達を待つ幽霊の子の話。ライブのオープニングで、オーディエンスに語りかけるには最適の曲だった。デモテープの『VOL.4』では、B面全部を使う組曲に発展した。。
 

6. ララバイは最後に

一度も言ったことないララバイを今きみに 
はしゃぎすぎて疲れたの? あどけない面影は 
でもみてたさ 赤いつぼみ 
いつからか目覚めてた処女のきざし 
それでもダーリン 忘れないでおくれよ 
姿なきぼくと たちくれた過ぎし日々
手すさびたリュートのように 枯れ朽ちるこの世界 
小夜鳴鳥のこずえも 走りぬけたチャペルも
聞こえるのさ ヨハネの声 
あふれつき堕ちてゆく 人の群れが
それでもダーリン 巣立たないでおくれよ 
亡者たちのゲヘナ 神愛でし御園にも
どんなに永く待っていたろう 生き死に変わり やむきみを
ようこそ ここへ ぼくと遊ぼうよ 
窓も戸もない 屋根裏部屋で
一度も言ったことないララバイを今きみに 
はしゃぎすぎて疲れたのさ あどけない面影は
ララバイ……
<解説コメント>
 オレがベースで創った原曲にメンバーがアレンジを加え、『VOL.4』のラストを飾るに相応しい曲になった。
 子供幽霊の友達だった女の子が初潮を迎えて大人になり、幽霊が見えなくなる前に世界が滅亡。孤独だった幽霊の子供は、同じく幽霊になった女の子と末永 く幸せに暮らしました、といういささか屈折したハッピー・エンド。「『はしゃぎすぎて疲れたのさ あどけない面影は』なんて詞をゾンビさんが書くなんて信じられない!」と冷やかされた。
 

7. ヴェルヴェット・キティー

夕暮れ間近い都市のなきがらに 
主のかけらを拾い 拾い集め 
黒猫は夢にみる 壁に瑪瑙の降る夜を
瓦礫覆いこむ繻子のかたびらに 
爪と毛の色 ひたしあざむき続け
使い魔は指ねぶる 噛んで粘りの出ぬ骨を 
夢をみる 夢をみる いつかおまえの出会う夢
<解説コメント>
 velvet kitty。ビロードの毛並みをした子猫。使い魔。
 モーリー曲のサビメロはすぐに決まり、最終選考(?)に残った言葉が「ヴェルヴェット・キティ」と「ヴァイオレット・キティ」だった。
 サイバーSFチックな風景描写と黒魔術的ガジェットの融合。
 ステージで特に人気の高い曲で、オーディエンスはいっせいにバンキングしたり、頭上クラッピングしたりした。このおかげで、傾向の近い『鬼』はライブで演奏されることが少なかった。
 

8. 悦楽園

「これから、おまえたちを、ステキなところへ連れて行ってやろう!」
途切れたはずの月明かり 波寄せる流砂
砦に刻むイシス像 瞳に射抜かれて
もどれない 彼方へ 放たれた戸口へ
夜ごとに結ぶ夢契り ざわめくインキューブ
もげる腕をふりふり 屍人のダンス さいはての民よ
忌まわしい獣と まぐわいし奈落へ
「遺伝子に呪われた子供たち
タナトスに歯向かう さすらい人たち
鮮やかな罪に彩られた 俺達の楽園へおいで!」
祈り捧げる者ども 死に絶えて
恵みを忘れた神々が
腐肉 食い散らされた玉座またがり
さしだすネクタル しぼりたての血!
「どろどろに腐った愛が欲しいのかい?
それとも 糸を引く快楽がお望みかい?
all right! くれてやろう そのかわり 
おまえたちの魂をもらって ゆくぜ!」
<解説コメント>
 ライブでのフェイブリット・ナンバー。
 モーリーが、これともう一曲、新曲候補をテープに入れてきた。どちらもサバス風だったが、こっちの方が断然いいんで採用した。
 歌詞といえば、歌メロにイマジネーションを乗っけまくった。当時から傾倒していたクラーク・アシュトン・スミスの『アラベスクとグロテスク』が自然と入っていった。
もちろん、ボッシェの絵画のイメージもある。
 

9. 葬列

陽炎たち昇る ヒースの茂る丘 
はかなき眠り 棺の中で 
あなたは目を閉じて 葬列が過ぎてゆく 
弦月あやしく光陰落とす 召霊の輪の上に 
指にからめたハシバミの枝 揺れる 風もないのに 
蘇れ死せる者!
大地の王よ 大気の精霊よ 我が願いかなえたまえ 
この魂の行く末にかけて
紫の燐光さざめいて 影のない あなたが現れる 
生きてた時には つば吐きかけた 気高きくちびるが
今宵ほころんで
月の胎児孕んだ 銀色の乙女よ 
杯を交わそう 幽鬼たちの宴
やがて朝露のしとねが まばゆいシャワーに満たされる 
まどろみの底で あなたはどこに 
ところがjesus!
来世の幸投げ捨てた この腕に抱いていたのは 
ひからびた白い髑髏さ
<解説コメント>
 Tabbasa初期に金井と創ったバラード・ナンバー。ステージでも人気が高く、新生Tabbasaになっても演奏した。最初は『VOL.2』に収録する予定だったが、突然、機材が不調になったり、テープの回転テンポが変わったり、人の声が入っていたりしたので、この時は見合わせた。
 当時は手に入れるのが難しかった悪魔学文献や海外幻想小説を古本屋であさり、歌詞にかなり反映されていたため、「黒魔術を教えてください。」などという高校生が家に押しかけてきた。この分野で特に愛読していたのが、酒井潔著の『悪魔学大全』だった。
 

10. バフォメット・ライジング

ムシり捨てた翼の傷跡が 今夜はうずきやがるぜ 
押し広げたおまえの罪心 あじわう時が来た 
バフォメット 七つの空を貫きここまで落ちてきた堕天使 
バフォメット おまえの中に招いておくれ
泥に生まれ地上を這いまわる ケナゲなおまえが好きだぜ 
まばたく間の幸せ その代価 気づかぬ浅はかな 
バフォメット 七つの空を貫きここまで落ちてきた堕天使 
バフォメット おまえの中に招いておくれ
闇に飲まれ堕ちてくエクスタシー 奴隷のモラルが何さ 
輝くだけ輝き堕ちてゆく おまえはまぶしいぜ 
バフォメット 七つの空を貫きここまで落ちてきた堕天使 
バフォメット おまえの中に招いておくれ 
オレはいつでも おまえの味方 その目を閉じて 感じておくれ
<解説コメント>
 モーリーが同時進行のバンド『スティール・フェアリー』用に書いた曲を無理矢理流用させていただきました。当時のジャパメタのエッセンスが入っているせいか、一般ウケは非常に良かった。
 歌詞は『ヤケクソでヒネクレた心意気』。当時、大好きだったアマバンに『レベル・パワー』というのがあって、このバンドの『堕天使』という曲から言葉とイメージをいただいた(部分もある)。ヴォーカルのHIZUMIさんは、今では大御所になってしまわれました。加えて言うに、オレはミルトンの『失楽 園』がホントに好き。あんなにかっこいい物語は他にない。
 

11. マダム・エルゼベエト

たとえばそなたの震える指が きしむ歯車にこときれようとも 
卑しい農奴のはちきれる命は 姿見の奥に生きながらえるさ 
鮮血まみれたチェイテの城に エリザベート伯爵夫人  
わたしのことだよ
退屈それゆえ 老いさらばえる むせる血煙に身をひたさずには
百姓娘のくだらない末路なんて 美しいままでいるのが罪というの? 
生きては帰れぬチェイテの城に エリザベート伯爵夫人 
ひざまづいておくれ
槌音こだます城壁の門 生きて埋められる 裁きの答えは 
白百合この肌 朽ちてゆく無念ほどに 暗闇 亡霊 孤独もこわくないわ
絞首台そびえるチェイテの城に エリザベート伯爵夫人 
いまにみておいで
<解説コメント>
 モーリー作のLAメタルそっくりの曲に、原くんとハカマダがイヤというほどアレンジを加え、まったくベツモノにしてしまった。
 エリザベート・バートリー伯爵夫人について、これまで数多くのバンドが取り上げているが、『女の内面』に言及した歌詞はあまりない。『悪役中心主義』のオレにしてみれば、彼女がどんなに恐ろしい女性だったかよりも、何を想っていたかの方によっぽど興味がある。他人の生命なんかより、自分が美しくあることの方にはるかに高い価値を置いていたんだろう。それはそれで、スゴいことだ。
 

12. オープニング

13. ジュダス 放浪者の夢

飛び去るカラス 羽音に怯えて 尖った爪をこすりあわせる
名もなき墓地で息をひそめて 誰を待つだろう
冥府の鍵をちらつかせて 背中に運命 ギヨチーヌ
救いと報いを計りにかけて 何を得るだろう
フィナーレはるかに 巡る物語
いつかこの身にも 終わりが来ると
死神にさえ見捨てられて 放り出されたラビリンス
夜風にねじれるロープの輪の中 何を見るだろう
炎の縁にひれ伏したまま おのれの罪を嘆くのもいい
とばりの向こうに平穏があると 誰が知るだろう
<解説コメント>
 ギターのモーリー、ドラムのハカマダ、ベースの原くんが加わり、新生Tabbasaになってから一発目の曲。スタジオで過去の曲をリハーサル中、モーリーがリフを弾き出し中間のアルペジオができ、ハカマダがブレイクを入れて、あっという間に完成。わずか15分たらずだった。Tabbasaにこの曲あり!というほど初期ライブで演奏しまくった。
 歌詞は、アイルランドの寒村の牧師マチューリンの書いた『放浪者メルモス』というゴシック・ロマンスが下敷きになっている。メルモスは神の怒りを買って死ぬことができず、不幸な人々の前に現れ、「おまえの来世の幸福とひきかえに、この窮地から救ってやる。」と契約を申し出るのだが、ついぞ応じる者はいなかった。唯一、メルモスを愛した人間の娘ですら首を縦にふらずに死んでいったという、とても哀しい物語。
 

14. スターチャイルド

星の迷い子 イバラの庭に産み落とされた異邦人
霧の雨降る癲狂院に 響く産声 天に届くまで
おお神よ 見守りたまえ 心さみしきみなしごを
母の一族 のたうちまわる そこはあたかも屠殺場
父の定めか食らう咽喉笛 すする血しぶき 蜜の味ににて
おお 神よ 導きたまえ 姿みにくき乳飲み子を
風のたよりは見世物小屋の牙を抜かれた道化者
物珍しさ誘う火遊び まいた末裔 地に満ちる時が
おお神よ 哀れみたまえ ふるさと焦がれる迷い子を
「星の降る夜 耳をすましてごらん 
 聞こえてくるぜ スター・チャイルドの啜り泣きが」
<解説コメント>
 モーリーが持ってきた曲に、全員でアレンジした。中間部の悲鳴は原くんのもの。
 この曲でラジオ・オンエア・コンテストのオープニングに出演。制限時間をオーバーしていたため「審査対象にはできない」と忠告されていたのだが、構成・ストーリー上、短縮できず、このまま演奏した。Tabbasaの名を知らしめることの方が、賞を取るより重要だと判断したからだった。
 ホールの緞帳があがり、異様な装束のメンバー登場。「今日はTabbasaのワンマンショーにようこそ!」とかなんとか大風呂敷のM.C.をしゃべりまくり、「さあ、行くぜえっ!」とばかりに右腕をあげてポーズを取っていたモーリーを困惑させた。大アクションの大熱演で観客席はあったまり、『審査員 特別賞』をいただいた。この時に客席でノリまくっていた高校生が、『タバサ・アーミー』の中核となった。
 歌詞の方はラリー・コーエンの『悪魔の赤ちゃん』とか、『エクストロ』とか、『悪魔の受胎』とか、『モンスター・パニック』とか、大好きなB級ホラーのエキスがたっぷりつまっている。特に『悪魔の赤ちゃん』の「分娩室で、医者、看護婦、助産婦、血まみれで全員死亡、赤ちゃんの姿はなし。」という冒頭! なんてステキなんだろう! ゾクゾクした。
 オレの傾向としては、心情がどうしても怪物の方に行っちゃうわけで、地球に産み落とされてしまった混血児の悲哀を歌いたかった。
 

15. 死者達の夜明け

俺の顔には目玉がないのさ
二つ穴のむこうに虚空が見えるかい?
アバラ喰い破るシデムシ散らかし
眠れない夜のおまえを訪ねていくぜ!
俺はゾンビ 歩く屍
俺はゾンビ 腐乱死体さ
泣きださないで なにもしないから
腐り溶けたペニスはおまえに入らない
触れさせておくれ 血の通う肌に
ウジたかる前のおまえも愛しているぜ!
俺はゾンビ 歩く屍
俺はゾンビ 腐乱死体さ
呪われた死者達の夜 
翳りゆく うつつのサークル
俺の残した うなじの痣から
変わり果て 崩れる 自分がわかるかい
虚ろだらしなく ゆるんだ くちもと
埋められる頃にもっと きれいになるぜ!
おまえはゾンビ! 歩く屍
おまえはゾンビ! 腐乱死体さ
呪われた死者達の夜 
翳りゆく うつせみ おぼろに 
嗚呼 輪廻の鎖を解き放ち
とこしえ 暗黒の深遠の彼方 
葬り去られし 我らが夜明けへ
<解説コメント>
 オリジナルTabbasa結成2年目の琉大際のコンサートで、なぜかバンドはウケまくり、人気投票アンケートで第1位を記録してしまった。前年はワースト1だったのに。メーク・アップのせいだか、M.C.のせいだか、オレは『ゾンビ』、『ゾンビ』とイラストまで書かれまくり、それ以来『ゾンビ』と名のることになった。
 『死者達の夜明け』は新生Tabbasaになってから、ベースで書いた曲だ。まだメンバーが慣れていないこともあって、メイン・リフ、サビ、展開部まで、全部原案のまま。あんまりのったりして長いんで、モーリーが苦情を言ったりしたが、そのうちオレのテーマ・ソングとして定着した。
 歌詞はブラックでユーモラスでアイロニカル。この当時、あのスプラッターの歴史を変えたサム・ライミの『死霊のはらわた』がロードショー公開されていたが、オレの意識したのは高校時代に観たロメロの『ゾンビ』の方だった。今でこそ、マスター・ピースとされ崇められてはいるが、当時は『最悪のキワモノ映画』と酷評されていた。脳味噌が洗われるほど感動したのに。
 理由はいくつもある。古典的怪物映画のように、存在をほのめかしてたっぷりじらしてからの登場ではなく、とにかくしょっぱなから出ずっぱり。しかも、主要登場人物は次々死んでゾンビになり、最終的に生き残れたかどうかもわからない。さらには、ゾンビの存在意義自体にも斬新さを感じずにはいられなかった。それまでのモンスターが人間に関わる行動様式には既存の生物学的動機が模倣されていた。補食のためとか、生殖のためとか、さらには、敵を殺して生き残るためとか、一般生物の行動パターンの延長でしかなかったわけだ。ところが、リビング・デッドときた日には、人肉を食ったからといって長生きできるわけでも、生殖できるわけでもない。やがて肉体が滅びてしまうまで、ただ食うだけだ。なんじゃこりゃ? さらにトロくて弱く、個体ではキャラ立ちもできないくせに、集団になると手のつけようがない。かつての肉親や恋人にさえも、見境なく襲いかかる。これほど、刹那的でユーモラスで悲劇的なモンスターはかつてなく、オレはゾンビに対してある種の爽快感と共感を禁じ得なかった。かくして、『ゾンビ』という称号をありがたく頂戴したわけである。
 この曲は最初、新メンバーの顔見せもかね、琉大の新入生歓迎コンサートで披露されたのだが、その時の観客の顔といったらなかった。キツネにつままれたみたいでぽかーんと、曲が終わってしばらく蝋人形みたいになっていた。ライブをやってるとこんな快感もあるんだなあと感じ入った。
 

16. 沼へ(ライヴ・ヴァージョン)

脳味噌 嘘で固められ 行方もわからず蠢くおまえら 
不毛の大地によどむ闇 シカバネ蹴散らし走れ!
俺もあんたも発情豚 目隠しされて鼻先ニンジン 
救いようないマリオネット これも宿命 踊れ!
心もないまま放たれて 自分勝手な夢を抱く 
おまえが何かも知らぬくせに 子宮の底で何を思う?
叫べ! おののけ! 舌を噛め! 立ち止まろうなら体が沈む 
ぬかる泥水しぶきあげ ムクロ漂う沼へ!
心もないまま放たれて 自分勝手な夢を抱く 
おまえが何かも知らぬくせに 子宮の底で何を思う?
<解説コメント>
オレと金井とハカマダが琉球大学ロック同好会に参入、IZOMを結成して最初にできた曲で、楽曲は金井の作。
 なにしろ、この3人、音楽の好みがバラバラで、コピー曲の選択が困難だった。ダークなのが好きなオレ、テクニカルなのが好きな金井、ポップス系よりのハカマダ。意見の合おうはずもないが、他にバンドを結成できるメンバーもいない。仕方がないので、初ライブからオリジナル満載にしたら、完コピ主義が全盛だった当時のシーンからさんざん叩かれた。オレが弾けもしないベースを持ち、歌が死ぬほどヘタクソだったというのも大きな要因だったが。
 歌詞はこの前の年に書いた400字づめ70枚くらいの短編小説のエッセンスが封入されている。「オレたちは先に何が待ちうけているかもわからないのに、他人を押しのけながらひたすら走っている。生まれる前も、生まれてからも。」という学歴社会と受験制度に疑問を持ちまくっている浪人生ならではの物語だった。
 この曲はTabbasaになってからも定番ラスト・ナンバーとなり、みんなで大騒ぎするのに絶好のメタル・アンセムとなった。このライブ収録前後、オレは某ジャパメタ・バンドに相当入れこんでいて、帰省している時はライブに通い、最前で踊り狂っていた。M.C.にモロ影響がでている。
 
 

 
 

 

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1.序曲『爛陽』 2.王陵の谷 3.アギの橋 4.鬼(手の鳴る方へ) 5.屋根裏の子供達 6.ララバイは最後に(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.坂口)〜「Tabbsa Vol.Ⅳ」より
7.ヴェルヴェット・キティー 8.悦楽園 9.葬列(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.かまるー)〜「Tabbsa Vol.Ⅲ」より
10.バフォメット・ライジング 11.マダム・エルゼベエト(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.原)〜「Tabbsa Vol.Ⅱ」より
12.オープニング 13.ジュダス 放浪者の夢 14.スターチャイルド 15.死者達の夜明け(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.原)〜「Tabbsa Vol.Ⅰ」より
16.沼へ(ライヴ・ヴァージョン)(V.本庄、G.仲嶺、D.袴田、B.原)〜「Tabbsa Vol.Ⅱ」より
 

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1.屋根裏の子供達   2.ヴェルヴェット・キティ  3.魔道師の船 〜 1987.2.15 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
4.ダンシング・フリークス 5.王陵の谷 6.鬼(手の鳴る方へ) 7.ネフェルトの祈り 〜 1988.11.6 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
8.葬列  9.セイレーン・エレジー  10.スパイダー・スパイダー 11.ギター・ソロ 〜 1987.2.15 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
12.悦楽園 〜1986.11.9 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
13.マンゴ・ソング 〜 1987.11.8 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA
14.マダム・エルゼベエト 15.死者達の夜明け 16.沼へ 17.ジュダス 〜 1987.2.15 at SCRAMBLE Naha, OKINAWA